昨年度事業報告
2024年度事業報告
2024年度の経済状況は、国際的には地政学的リスクが大きく顕在化し、原油価格の高止まりや為替の変動等により、日本経済に大きな影響を与えました。輸入物価の上昇に加え、人手不足による賃金上昇、物流2024年問題による輸送コスト上昇等によって、様々な国内物価が上昇しました。物価上昇に対し実質賃金がマイナスとなり、個人消費が抑えられ2024年度は日本経済全体に好況感が感じられない状況でした。
印刷産業においては用紙・フイルムなどの原材料費やエネルギー費の上昇等が続き、またデジタルシフトによる紙媒体の需要減少も加わり、経営環境は大変厳しいものとなりました。そんな中、印刷工業会が隔年に実施している会員台帳調査(2024年10月実施)では、前年に対して売上・利益を「伸ばした」とした企業数は「減少した」とした企業数を上回りました。このことから、厳しい経営環境において、各社の強みを生かした経営が図られていると考えられます。一方、拡大事業ポートフォリオの構築やDXを含むデジタル技術の強化、人財不足、コスト増に対する価格転嫁が大きな課題となっています。
このような中、印刷工業会の各部会においては、「価格転嫁」「取引慣行改善」「人材不足」といった印刷産業が抱えている諸課題を主軸に活動を行い、併せてそれぞれに策定した「年度計画」に則り、精力的に活動を行いました。出版印刷部会では、日本雑誌協会、日本出版取次協会に「出版製造課題」について申入れ、その内容を「2024出版ビジネスのために」として策定し、業界団体を通じ配布しました。また、大規模災害を想定した「緊急協議訓練」を継続実施し、より実効性を高めました。新たな取り組みとして、「本の贈り合いイベント」や「SNS情報発信」を実施しました。商業印刷部会では、「商印部門におけるDX人材育成」をテーマにヒアリングや勉強会を実施しました。紙器印刷部会と軟包装部会では、原材料価格の高騰に際し市況動向の情報共有と物流2024年問題を含めた取引慣行改善に向けて取り組みました。液体カートン部会では、関連業界団体と連携し「エコプロ2024」への出展や回収状況調査を実施し、リサイクル活動の推進に努めました。スタッフ部会である教育・研究部会では、「事業基盤強化」「人材育成」「SDGs」等をテーマに講演会・セミナーを開催し、多数の方々に聴講いただきました。その他の部会でも、それぞれのテーマに沿って「勉強会」「見学会」を随時実施し、部会員にとって有益な知見や経験を得る活動を行いました。
上部団体である日本印刷産業連合会へは15名の理事と1名の監事に加えて、常設委員会にも多数の委員を派遣し連携強化を図り、更に経済産業省他に対しても業界団体として協働を行いました。2024年度は印刷産業にとって大変厳しい1年でありましたが、印刷工業会の会員相互の信頼とコンプライアンスを基本として、共通課題に向けて積極的に取り組みました。改めまして、役員の皆様をはじめ、会員企業の皆様の印刷工業会の運営に対するご理解とご支援に、心より御礼を申し上げます。